これが私の王子様
当初一方的に――というか無理矢理決められたことに、ゆかは戸惑いを覚えていた。
また、周囲からの反応を思えば、転校生の身分で学校一の人気者。
ましてや、王子様と呼ばれている人物と帰っていいのか――
徐々に不安が大きくなっていき、身体が小刻みに震えだす。頼りの詩織は掃除当番なので、一緒に待ってくれない。
それ以上にゆかは、自分に突き刺さる切っ先鋭い視線に怯えていた。
どうやら食堂でのやり取りが学校中に広がってしまったのだろう、和人と一緒に帰られることに不満たっぷりの様子。
だが、詩織に言われたことが彼等の行動を制するのだろう、睨みつけられても手は出されない。
(本当に、来てくれるのかしら)
あの時はあのように了承してくれたが、内心では嫌がっている。
だから、先に帰ってしまった――と、ゆかは悪い方向に思考を働かせてしまうが、和人は約束をすっぽかすことはしなかった。
突如響いたのは、今日何度も聞いた黄色い悲鳴。それによってゆかは、和人が先に帰っていないことを知る。
オズオズと顔を覗かせると、和人が此方に向かって歩いて来るのを眺める。