これが私の王子様
「なら、駅まで行こうか」
「はい」
「緊張している?」
「緊張は……」
「しているだろう」
「……はい」
「やっぱり」
この状況で緊張しないのは、詩織くらいだろうとゆかは考える。
相手はこの学校一の人気者で、多くの女子生徒から「王子様」と呼ばれている人物。そのような生徒と一緒に帰宅するのだから、過度に意識してしまう。
それ以上に、ゆかはこのように異性と一緒に帰宅したことがない。
はじめての帰宅が和人なのだから、緊張と共に頭が真っ白。また脚が一歩も出ないようで、その場に立ち尽くす。
「行かない?」
「い、行きます」
「変わっているね」
「変わっている?」
「そう、他の生徒とは……」