これが私の王子様

 突然そのようなことを言われ、緊張は一瞬にして消滅し、不安の方が強くなってくる。

 しかし和人は、悪い意味でゆかを「変わっている」と言ったのではなく、他の女子生徒と違うという意味で言った。

 普通、この学校の女子生徒は和人を見ると黄色い悲鳴を上げ、自分を気に入って貰おうと集まってくる。

 だが、ゆかは――

 だから和人は、ゆかをそのように評した。

「私は、結城君のことを詳しく……」

「菅生から、聞いていない?」

「少しは……」

「で、どうかな?」

 その質問にゆかは、首を傾げる。

 するとその反応が愉快だったのだろう、和人は笑いだす。

 和人の笑いに周囲にいた男子生徒はギョッとなるが、女子生徒の反応は相変わらずのもの。そう「かっこいい」と、一様に口にする。

 今の言葉は和人にとって禁句に等しいのか、素敵とも取れる笑顔が曇り出す。

 和人は彼等に気付かれないように嘆息すると、ゆかに向かって手招きし早くこの場から立ち去ろうと促す。
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