これが私の王子様

「水沢さんと違って、昔の学校は嫌いだった」

「どうして、ですか?」

「地位に縛り付けられる」

「地位?」

「中学まで、水沢さんがイメージしている金持ちが通う学校に行っていたけど、本当に友と呼べる者はいなかった。誰もが巨大グループの御曹司としか見ておらず、女達は相変わらずだ」

 私立から公立の高校に入学したのは、その煩わしさから逃れる為であったが、周囲の反応は何処へ行こうが変わらなかった。

 しかし、公立に行ったことによって救われたこともあった。

「今は、薫と直樹がいる」

「お二人は、違うのですか」

 「勿論」と言い、和人は頷く。

 二人は和人を「御曹司」と見ず、普通に接してくれる。

 当初は何か裏があると勘ぐっていた和人であったが、二人と付き合っていくうちにそれが間違いだったと気付かされたという。

 だから周囲があれこれと鬱陶しく騒ぎ立てても、和人は転校することなく青藍高校に在学し続けられる。
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