これが私の王子様

 もし二人がいなければ、とっくに転校していた。

 そう、和人は語る。

「で、水沢さん」

「は、はい」

「俺の後ろを歩かないでほしいな」

「で、ですが……」

「話し辛い」

 今、ゆかは和人の後方を歩いていた。並んで歩くのが恥ずかしいという理由で、決して和人の横に行こうとはしない。

 しかし和人にしてみたら、ゆかには並んで歩いてほしかった。

 傍から見れば異様な光景に映るらしく、行き交う人々が奇妙なモノを見るような視線を送ってくる。

 そのように話す和人にゆかは慌てふためくと、いそいそと彼の側に歩み出ることにした。

「この方が楽でいい」

「ご迷惑ではないでしょうか」

「迷惑?」

「私なんかじゃなく、もっと……」

「俺は、水沢さんの方が何倍もいい」

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