LB4




入社当時から面倒を見てきた可愛い後輩。

今までは爽やかすぎて逆に胡散臭い笑顔とか、キメの細かい肌とか、艶やかな髪とか、そんなところばかりに目をつけていた。

だけどこの頃は、脂肪のないゴツゴツした手とか、よく見ると広い背中なんかが目に入ってくる。

なるほど、本当だ。

よく見るとちゃんと男らしい。

爪が短くて先端の丸い指。

両腕にいくつも浮き出ている血管。

肘を曲げたときにできる筋肉の影。

お、喉仏もいいな。

……ん? いい?

あれ、なんか私の思考ヤバくない?

可愛い後輩だった板東が、全然可愛くなくなった。

急に大きく見えてきて、板東がこっちを見ると、なんか落ち着かない。

あっちを見てても落ち着かない。

「どうしたんですか、相澤さん。珍しく仕事遅いっすね」

「ほっとけよ。ちょっと疲れただけ」

ただでさえ口が悪い私。

動揺していつも以上に言葉が粗っぽくなる。

「出た。元ヤン口調。だからみんなに恐れられるんですよ。あー怖い怖い」

「うるせーな。TPOをわきまえてるからいいんだよ」


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