T&Y in神戸
「ひとりで駅に来たのか?」
「ううん、安西さんに送ってもらった。」
由香利は俺に手を引かれて半歩後から、キョロキョロと辺りを物珍しそうに見渡しながら答える。
「……そうか。」
「今夜はおじいちゃんが泊まるって。」
「……。」

やはり、ジジイのSPだったと納得する。


「直ぐ来る?」

売店の前で由香利は立ち止まった。
その質問がJRの時間だと直ぐに気づく。
「ちょっとだけだぞ。」

形勢逆転、由香利に手を引かれ売店の中へ。

コンビニとは違う品揃えに由香利の目が輝く。

「たあちゃんはどれにする?」
飲み物の棚を物色する由香利。
「……。」
“どれでもいい”と言いかけて、由香利と一緒に棚を物色する。
甘そうなアップルティを手にすると由香利は目を細めて、やっぱりと笑った。
「私はこれにする。」
あっさりとペットボトルのお茶を手に取った。

「夕食に安西さんがお弁当を作ってくれてる。」
「なら、お茶は分けよう。お前も何か選べよ。」










駅のホームに立つと、星の見えない空が天井の隙間から見える。
日中暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ冷える。

「寒くないか?」
「平気だよ。」

キャリーバックに座って由香利はにっこりと笑った。


構内アナウンスが新幹線の到着を告げる。

「ドキドキするね。」
「そうだな。」

白い車体が見えたと思うと、あっという間に目の前を通りすぎた。



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