T&Y in神戸

岸が週末のデートに全ての日程を合わせてくれる。


どんなに残業しても気力がつきないのは楽しみがあるからだ。




「…随分とご機嫌なんですね。」


昼休み過ぎの社内の廊下で柏木弘志に指摘される。

駄々漏れなのかと半歩後ろを歩く岸に問えば
「かなり。」と苦笑された。
回りには年度末の業績効果からだと思われていると補足され、胸を撫で下ろした。


ジジイに知れると何かと煩いことになりかねない。

「……デートですか?」
「悪いか?」
声を落として聞いてくるこいつに牽制する意味を込めて返す。

「いいえ、神戸で、」

柏木の口から出た知られていないはずの街の名に動揺すると、「高井さんも知っていますよ」と当然のように返された。

振り返り岸に尋ねようとすれば、
「鈴木部長もご存知ですよ……って、内緒にしているつもりだったんですか?」
柏木の呆れた声。
岸も苦笑いだ。
「由香利から聞いたんですけど。」
「……由香利から?」
「神戸に行くからって、お勧めの場所を聞いてましたよ。」
「……。」
いつの間に話をしたのか問い正そうとすれば。
「楽しみにされているんですわ。」
岸のフォローに柏木も頷く。
だからドタキャン禁止ですと、岸に促され足早に部屋に戻された。
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