王様の友達
王様の友達
『パーフェクト』という言葉は俺の為にある。
勉強をすれば学年トップ、運動をすれば新記録樹立の嵐、容姿も高身長にスカウトが群がる男前。
この俺に不可能なことなどないのだ。
誰もが俺に憧れ媚を売り、跪く。
この俺に不可能なことなどないのだ。

ただ一人の女の扱い以外は。

「すごーい、中川君また成績トップなんだ」
「中川っ頼む、今度の陸上大会助っ人で入ってくれ!」
「ねぇねぇ、この雑誌の読者モデル応募してみない?」

会話全てが俺への賞賛。当たり前だ。俺はパーフェクトだからな。むしろこんな賞賛じゃ足りないくらいだ。もっと俺を褒め称え崇めるべきだろう。

「悪いが、トップなのは当たり前だ。テストを作成した教員が俺より低脳だからな。助っ人もやらん。こんな暑い時期に長時間外にいたら焼けてしまう。モデル応募もしない。俺が出たら読者という型に収まらず、他のモデルを喰ってしまう」

呆然とする奴ら。

「失礼」

立ち去ろうと席を立ったところ、後ろから下品なばか笑いが聞こえてきた。

「ぎゃはははっ、相変わらず王様おもしろいね」

『王様』俺にはぴったりの言葉だ。人の上に立つ人間として相応しい言葉だろう。
だがこいつのこの言葉は賛辞ではない。侮辱だ。

「そんな睨まないでよ王様」

馬鹿笑いとは対照的なこの優雅な笑みに腹が立つ。




初めてこいつを視界に捕らえたのは6月の席替え。
俺は窓際の後ろから二番目という中々のポジションを手に入れ、移動を完了させた。クラスの誰もが俺の側に座りたがった。その証拠に、俺の前の席の女子はさっきから後ろをチラチラと振り返っては顔を赤くしている。
真ん中の列だったならば、もっと大勢の人間が俺の側に座れただろうに。ついてないなこのクラスは。

「げー私の前中川かよ」

ん?『げー』?それは何かを嫌がったりする時に使われる奇声ではないのか?それが何故俺の名前の前に使われている?
振り返るとそこには見たことも無い女子が座っていた。

「中川座高高いから前見えないじゃん」

俺は座高が高いんじゃない。身長が高いんだ。よって足も長いんだよっ。
初対面から失礼な女、それがこの野山とよこだった。





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