赤い扉(ホラー)
☆☆☆

しばらくしてりえが落ち着きを取り戻すと、まだ床に転がっている飴に目をやった。


確かに、覚えている。動物の形をしたいろんな色の飴。


それは、りえが子供の頃、母親の伸江がよくりえに食べさせていたものだった。


りえが泣いたとき、いつも伸江はポケットから飴を取り出し、「これで泣き止んで」と言った。


子供だったりえはその飴がほしくてわざと泣くことも何度かあった。


小さくて、甘くて、可愛くて。


りえは今でもスーパーでその飴を見かけると手に取ってしまうほど好きだった、母親との思い出の飴……。


「大丈夫か?」


サヤカがりえに熱いコーヒーを渡す。
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