愛なんてない
「……お邪魔します」
わたしは躊躇いながら玄関に足を踏み入れる。
すると、意外にもいい香りがして気分が落ち着いてきた。
バタンとドアが閉じられてパッと灯りが点き、アパートの様子がよく見えた。
玄関から入ってすぐ左手に台所が見えて、右手にはバスルームっぽいドア。
仕切がない六畳間は和室で、コタツとテレビと棚にタンス……
きちんと片付いて整理整頓され、ゴミひとつ落ちてない。
「風呂沸かしてくるから、とりあえずこれ着てコタツに入ってろ」
そう言って相良先生が渡してくれたのは、青い上下のスエット。
「ありがとうございます」
わたしがお礼を言うと、相良先生はビニール袋をコタツに載せ、「好きなもん食え」といってバスルームに向かった。
確かにお腹は空いてた。
スエットを着る前に遠慮なく袋を物色すると、パスタやサラダ、他に幾つか若者が好みそうな食べ物があった。
わたしが苦手なものが入ってないし、それにすぐ食べられるようにあっためてある。