愛なんてない
京
ざあっと揺れる桜の枝がしなり、無数の音とともに花びらを散らす。
春の霞む景色のなか。
あのひと――
相良 京。
二度と逢わない、そう決めたのに。
なぜ、わたしの前に現れたの?
なぜ、わたしに声を掛けるの?
わたしを拒絶したのは、あなたなのに。
『帰れよ。二度と来るな。迷惑なんだよ』
雨のなかで拒んだ声は、わたしの胸に食い込んでその傷はまだ血が乾ききっていないのに。
どうして――!?