愛なんてない
わたしとの関係が知られたら困るんじゃないの?
それを恐れたし、京がわたしを拒絶するほど嫌ったからこそ離れたのに。
わたしはただただ京から逃げようと足を動かした。
見据えられた目を離したら、すぐに囚われてしまいそうだから逸らせない。
やめて、どうしてわたしを見るの!
視線と動作だけで触れられてもいないのに、わたしはじりじりと追い詰められてゆく。
やがて、とんと背中に木の肌の硬さを感じた。
桜の木を背にしたんだ、と感づいてわたしは体を横にずらそうと動いたのだけど。