愛なんてない
相良先生が優しさを載せた笑みを浮かべた途端、わたしの胸はトクンと小さく鳴る。
相良先生……
わたしを見ててくれたの?
わたしが遠慮し過ぎだって、普段から注意しないとわからない。
相良先生はわたしのクラスの担任じゃないし、古文担当以外は接点なんかないのに。
わたしを見ててくれた人がいた……。
その事実はわたしの凍りかけた心を少しずつ溶かしてゆく。
ポロッと涙がこぼれ落ちたのは、気がゆるんだせいだけなのか。
けれども、わたしはもう自分でも止められない。
「望月、辛いなら泣けよ。おまえの事だから我慢したんだろ」
思いっきり泣けよ、遠慮すんな。
ずっとずっと誰かにもらいたかった言葉を相良先生に言われ、わたしの涙は堰を切ったように流れ出した。