愛なんてない
やっぱり……
この髪に触れさせるのは、葵さんだけなんだ。
その現実がズンと胸に重くのしかかり、心までもが冷えてゆく。
わたしじゃない。
京が抱いてたのはわたしじゃない。
京はわたしを通じて葵さんだけを見て彼女を抱いてたんだ。
ポタポタ、と京の額に涙がこぼれ落ちる。
「うっ……うううっ……」
届かない。
わたしには届かない。
いくら手を伸ばしても、京の心が見えない。
わたしは必死に声を押し殺しながら泣いた。
京が目を覚まさないように。