愛なんてない



今だけは。





“弥生……愛してる”


一番欲しかった言葉。


でも。


“葵……”


葵……弥生。同じ名前の人なのかわからない。


でも、判ってしまった。


京の愛する人が。





……わたしには。


最初から相手になんかしてなかった。





「京……」


わたしは京の髪を指先でそっと掬ってみた。


ちょっとだけくせっ毛な京の茶色い髪。わざと黒く染めてる。地毛なのかな?


でも、京はいくら冷静さを失っていても、絶対に髪には触らせてくれなかった。


< 259 / 412 >

この作品をシェア

pagetop