愛なんてない
今だけは。
“弥生……愛してる”
一番欲しかった言葉。
でも。
“葵……”
葵……弥生。同じ名前の人なのかわからない。
でも、判ってしまった。
京の愛する人が。
……わたしには。
最初から相手になんかしてなかった。
「京……」
わたしは京の髪を指先でそっと掬ってみた。
ちょっとだけくせっ毛な京の茶色い髪。わざと黒く染めてる。地毛なのかな?
でも、京はいくら冷静さを失っていても、絶対に髪には触らせてくれなかった。