愛なんてない



女の子がクリームシチューに夢中になった時、女性は息を着いてぺこりと頭を下げた。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は沢木 弥生(さわきやよい)と申しまして、この子は娘の京子(きょうこ)と言います。京ちゃん、お姉さんにご挨拶は?」


……え?


やよい?


わたしと同じ……名前?


わたしは女の子がぺこりと頭を下げて挨拶する声も聴こえず、頭が真っ白になって思わず口走った。


「それじゃあ……葵さんは……」


言わなければ、よかったのに。


知らなければよかった。


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