愛なんてない






1時間経っても京が帰ってこないのを見て、弥生さんは改めてお伺いしますと帰った。


久しぶりにこちらに帰ってホテルに泊まってるから、と。







わたしは……


取り残されたわたしは。


どうしていいのかわからない。


このアパートには葵さんがいた事実に。


それだけ運命的な恋をして儚く命を散らせた葵さん。


彼女を命がけで深く深く愛した京。


……どうして。


わたしは弥生さんが出て行ったドアを背に、ずるずると床に座り込んだ。


おかしいな。

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