愛なんてない
「咲子……」
思いもよらぬ妻からの反撃に圭介はあからさまに動揺を見せている。
あの一時の勢いが信じられないくらいに。
圭介は弱々しい声で呼びかけるが、咲子は一瞬苦しげな顔をして震えながらも夫を振り切った。
そして、咲子も圭介に向かって宣言する。
「離婚しましょう……圭介。お互いに傷つけ憎みあう前に。私は何も見なかった何も聴かなかった。せめてそれくらいはできる。でも、それ以上は何も求めないで。
愛されていないのは解っていて、利用されてもそばにいたかったけど。やっぱり虚しいし悲しい。
疲れたのよ……私ばかり愛したのが。
私も私自身を愛してもらいたいもの」
誰だってそうでしょう?
咲子の小さな呟きは、俺の胸を激しく突いた。