可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

テレビ局の取材が来るほど、『オズの魔法使い』が評価されてしまったことがアダになったのか。あたしは文化祭の後、クラスの女子たちから「女優気取り」って煙たがられるようになった。


その後2年のモテ男に告られたことで、ハブりは決定的なものになってしまった。


それまでは同じグループだった子たちは「仁花ちゃんはいつも持ってるものがおしゃれでうらやましい」とか言ってたくせに、陰であたしのことを「ブランド狂」とか「嫌味成金」呼ばわりしだした。


先輩の女子からは「付けてる下着が中学生のくせにエロい」とかつまらない難癖つけられてヤリマン扱いされて。その噂を鵜呑みにしたバカな男に何度も絡まれて、ひどく不愉快な思いもした。


『成星院学園』に在籍することになんの価値も見出せなくなったあたしは、高等部には進まずに、他校の、それも公立の高校に進学すると決めたけど。そのときも『都落ち』だなんて陰で随分言われた。



『成星院』は自由で活気があっていい学校だったけど、ババアが選んでくる学校なだけあって、自惚れと特権意識の強いガキどもの巣窟でもあったのだ。



その中であたしは、落として優越感にひたれる恰好のカモだった。






教室に居場所のないあたしのあの中学三年間は、転落しきるだけの時間でしかなかった。





凋落がはじまる前の、ただ一瞬だけ輝いていた時間を。
あの時を、渚に知られていたなんて。




----------あまりに惨めだった。



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