可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。


◇ ◆ ◇



「まさかホントにこのためだけに、ニカが遅刻してくるなんて思わなかったな」



唇を離すと、渚がにやっと笑った。





「だからニカって言うな」

「おまえ絶対話乗ってこないと思ってたのに」

「聞いてる?……ってかべつにあたし、真面目キャラじゃねぇし。皆勤賞とか狙ってねえし」

「知ってる知ってる。おまえ見た目だけだもんな、優等生っぽいの」





あたしと渚は、今日もとてもキスしたばかりだとは思えないような、乾いたやりとりをする。






ここはバスのいちばん後ろの席。






あたしたちが通う高校は、駅からちょっと離れた不便な場所にあった。

大抵の生徒は駅からチャリで通うか、この路線バスを利用している。



あともう一時間も前だったら、この車内は同じ制服の生徒たちでごったがえしているところだけど。

学校の始業時間を大幅に過ぎたこの時間に乗り込んでくるヤツは、あたしたち以外いなかった。




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