可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
エレベーターの扉が閉まって再び降下しはじめると、あたしと渚は顔を見合わせた。
「……渚、あの舌打ち聞こえた?」
「ってかおまえ、横にいたババアどものすげえ顔、見た?」
一瞬沈黙した後。
ふたりして声を上げてげらげら笑い合う。
そして目論みが成功したことを称え合うように、あたしたちはひと気のないエレベーターの前でまたキスをした。
「おっさんおばさんだらけのエレベーターの中とか、よく思いつくよね。まじゲスだよね、渚」
唇を離しながらあたしがあざわらってやると、渚が鼻で笑って言い返してくる。
「それ楽しんでるおまえのがゲスだってんだよ」
「馬鹿みたい」
「ほんとにな、馬鹿だろ」
面白がってる顔をお互いに映し合ってまた笑う。