カモフラージュ~幼なじみ上司の不測の恋情~
「母さんが友希を産んで直ぐに事故に遭った。命が助かっただけでも奇跡的だったらしい。12年経った今ではほとんど事故の後遺症は無いし、普通に生活している。唯、激しい動きをするサッカーは出来ないだけだ。友希を見ていると、自分の姿と重なって切ないキモチになる・・・」



「逸希…」


「サッカーを始めた友希に正直言って、嫌な思いを抱いたのは確かだ。でも、友希に罪はない・・・」



「本当に辛かったんだね・・・」


「異国の地で育児に苦労する母さんに心配掛けさせたく無くて、すべて自分で乗り越えた。お前を失い、サッカーまで出来なくなった。当時は本当にどん底だったな」



それでも、逸希はそのどん底を這い上がって行った。


「強いのね。逸希」


「俺は臆病で自分のキモチはお前に伝えられなかったけど。オトコとしてのプライドはあったんだよ。お前に再会した時、こんな姿は見せたくないと。カッコイイ俺を見せたい。唯それだけの思いで、ここまでやって来た」


「逸…希」



「莉那には今の俺、どう見えてる?」


「十分カッコいいよ」


「よかった」
逸希はホッと安堵の息を吐く。


「サッカーは出来なくなったけど、お前だけは失いたくないな」


逸希は私の手を握って来た。離れたくない強い彼の想いが私の手をしっかりと握りしめる。
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