小倉主膳介と河童
その話が、小倉主膳介(おぐらしゅぜんのすけ)の耳に届いたのは、のちのこと・・。
「 河童が、悪さをしている?。それは本当か。
麗(うらら)。」
美麗な妖怪、ろくろく首の愛称を呼ぶ。
「はい・・。なんでも、自分を押し退ける者しか渡らせないと、そう申しておるらしですよ。」
口元をほころばせて、被衣姿(かずきすがた)の袖を口元にあてて、妖艶(ようえん)に笑う。
主膳介は、一息息をついて、
「しかたない・・、私がなんとかしよう。」
半かみしも姿で兵庫鎖太刀(ひょうごくさりたち)を腰元にさし、愛馬にまたがり屋敷を颯爽(さっそう)と出ていった・・。
「 風神様(かざがみさま)のように行ってしまわれた・・。」
ポツリと麗(うらら)が愛らしい小鳥のような声で呟く(つぶやく)・・。
麗の瞳は、どこか遠くを見ているようだった・・。