これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「恵は、総務課の人と社食とかランチに行かないのか?」

 ふと思いついたように尋ねられた。

「ランチはひとりのことが多いですね」

 ちょっと彼の顔が曇った。私の言い方が誤解を与えてしまったらしい。

「別に仲が悪いとか、いじめられているとかってわけじゃないんですよ。本当にみんなよくこんな私の面倒をよく見てくれています」

 勇矢さんがホッとした表情を見せた。

「……ただ、私は派遣社員です。契約期間が終われば次は新しい職場に変わります。そうなったときに、あんまり仲良くなるとさみしくなるじゃないですか」

 別れがつらくなる。だからある程度の距離を持っておくほうがいい。

 いつかいなくなるんだから……。

 手もとのおにぎりを見つめていると、彼の手が私の頭を優しく撫でた。

「そっか……まぁそのおかげで恵とふたりでお昼をたべられるんだから、俺は嬉しいけど」

 目尻に皺を寄せて笑う彼が、愛しくて胸が音を立てた。何気ない時間がこんなに大切に思えるなんて、恋の力は本当に偉大だ。

 いや、彼の力が偉大なのかもしれない。私にこんなに小さいけれど確かな幸せをあたえてくれる彼が。
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