これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 ドライヤーをかけ終わり、リビングへと向かう。

「あ、やっと出てきた。恵、電話がずっと鳴ってるけど大丈夫か?」

「ずっと?」

 マナーモードのウーウーという音が確かに聞こえる。

 普通なら折り返しをすれば済むから、電話を鳴らし続けるなんてことはしないだろう。

 そんなことをする人物はひとりだ。

「悪いと思ったけど、さっき画面みちゃったんだ。お兄さんだろ、出たほうがいいんじゃないのか?」

 急いでバッグからスマホを取り出すと電話が切れた。不在着信を知らせる画面には勇矢さんが言った通り“お兄ちゃん”と示されていた。

 そうこうしていると一度は切れていた電話が、再び震え始めた。

 私は、そのまま電源ボタンを落としてこれ以上電話が鳴らないようにして、スマホをバッグに戻す。

「いいのか、電話……」

「いいんです。後で電話しますから」

「だけど、そんな風に何度もかかってきてるってことは大事な用事なんじゃないのか?」

 彼の心配そうな顔を見て、申し訳なく思う。

「大丈夫です。いつまでも過保護でこまりますよね……。それより私お腹がすきました」

「あぁ、そうか。準備できたから運ぶの手伝って」

 勇矢さんはまだ何か言いたそうにしていた。でも私はわざとそれに気が付かないふりをする。

 彼がキッチンへと戻った後、私は「はぁ」と大きなため息をついた。

 彼なら事情を話せば、納得してくれるかもしれない。でも……。

 今はまだ早い。もう少し時期を待ってそれから話をしてみよう。

 自分の口から、きちんと説明しなければいけない。

「恵。早くしないと全部俺が食うぞ」

「あ、はーい。すぐに行きます」

 今はもう少し、何も考えずに勇矢さんとの時間を楽しみたい。

 それが私の我が儘だとわかっていても。
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