これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「好きだからです。……好きだから言えませんでした」

 恋愛なんてしたことない。片思いすら未経験の私が初めて好きになった人だ。

 その思いを何よりも大切にしていたからこそ、彼に自分の秘密について話すことができなかった。

「俺は、嘘をつかれるのが嫌いだ。それは話をしたことがあったはずだ。目の前にいる君は一体誰なんだ? 本当の恵はこんなところにいないだろう? いるわけがないんだ」

 本当の私……? いつだって私はひとりだ。別の人がいるわけじゃない。

 けれど勇矢さんの前で“二宮恵”と名乗っていたの事実だ。

「本当の君はこんなところにいるうような人じゃないんだ」

 彼のその言葉に自分自身が否定された気がした。

 今ここに立っている私は、本当の私じゃないの?

 嘘などついたつもりはなかった。でも彼にしてみれば隠し事も大嫌いな嘘も同じということなのだ。

「ごめんなさい」

 小さな声しかでない。しかも震えていて彼にちゃんと聞こえたかどうかも定かではない。

「謝るんだな。ふたりで過ごした時間を謝ってすませようとしてる?」

「私、そういうつもりじゃ」

 謝る他に方法が思いつかない。彼を怒らせたのは事実なのだから。

「まぁ、いい。思い出作りに利用された、かわいそうな俺に謝罪のひとつくらいはしておかないといけないだろうしな」

「勇矢さん、思い出作りだなんてそんなつもりありません!私は……」

 私のセリフを勇矢さんが遮る。
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