これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「行くぞ」

 はっとして顔をあげるとそこには宗治の姿があった。宗治が車に乗り込むとドアを閉め運転席へと回る。

 車をゆっくりと発進させる。すると後ろから声がかかった。

「死にそうな顔してるけど、運転中はしっかり集中しろよ」

「私はいつも通りですからご心配なく」

 前を向いたまま答えた。

「いつも通りねぇ~ちゃんと彼女と話をしたほうがいいんじゃないのか?」

「必要ありません。もうこの話はここまでで」

 これ以上は何も話さないと宗治に意思表示をする。

 俺はいつも通りだ。そう……彼女と俺との間には何もなかった。そうすると決めたのは自分なのだから。




 仕事を終えて、マンションに戻った。すでに深夜の一時を時計の針は指していた。リビングに行くと、猫がそれまで寝ていただろうソファからひょっこりと顔を覗かせた。

 自動餌やり器のトレイの中身が空になっていることから、すでにお腹は満たされた後のようだ。

 そういえば、これも彼女と一緒に買ったんだったな……。

 休日や仕事帰りによく時間を共にするようになてからは、ふたりでよくペットショップにも通った。次々と新しいおもちゃを猫に与えようとする彼女をたしなめるのが、毎回の恒例のようになっていて、それをお互い楽しんでいた。

 猫が足元にすり寄ってきて、ハッと我に返る。今日は一日中こんな調子だ。気を抜くと彼女のことばかり考えてしまっていた。
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