これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
***

 勇矢さんに連れられて、公園へ行った日。

 今まで生きてきた中で、一番涙を流した日。




 気が付けば私は自分のマンションで泣き崩れていた。

 あのとき、傷ついた勇矢さんの姿が一向に頭から離れてくれない。私に向けられた冷たい言葉と視線。

 本当の彼を知っているからこそ、あんな風に彼を変えてしまったことを心から申し訳なく思う。

 本当のことを話すチャンスはいくらでもあった。それを話さなかったのは私の弱さだ。

 嘘が嫌いだという彼に嫌われたくない一心で、本当のことを話せないなんて馬鹿げてる。

 彼を信用して、ちゃんと話をておけばよかった。

 こんなに好きなのに、どうして彼へ真実を話せなかったんだろう。

 ……きっと好きだったからだ。嘘をついてでも側にいたかった。

 だから、泣く資格なんてない。それすらないのに、私の目からあふれ出る涙は止まってくれることはなかった。

 会社の前に兄が現れたとき、私が家へ戻る日程が早まったと聞かされた。

 それは私の結婚相手が正式に決まったということだ。

 もう少し待って欲しい。そう告げたけれど、それは許されないことだった。

 もともと、私がひとり暮らしできたのも、兄の決めた結婚相手と結婚することが条件だったからだ。

 小さい頃からそれが当たり前だと思っていた私は、深く考えずにその条件を飲んで、しばしの自由の時間を手に入れた。そして、時期が来れば言われた通り、結婚して相手の家の入るものだと思っていた。
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