これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「そうね。梅さんは私の本当の家族だわ」

「もったいないお言葉です。それならなおさら言わせていただきます。私は大切なお嬢様が不幸になる姿を見たくありません」

 とうとう、梅さんはエプロンからハンカチを取り出して、涙を拭い始めた。

「このままでは、お嬢様のご結婚をお決めになれた、大輝様まで嫌いになってしまいそうです」

 極論を言い始めた梅さんを宥める。

「相手を決めたのはお兄ちゃんだけど、結婚を決めたのは私よ。お兄ちゃんのせいじゃないわ」

「そうはおっしゃいましても……」

 私の話を遮ろうとした梅さんを手で制する。

「梅さん、もう少しだけ聞いて。私、この家を出てひとりで生活したでしょう? 自分で働いてお金を稼いで。失敗ばっかりで自分がどれだけ世間知らずか改めて思い知った」

「……そんなご苦労されなくてもよかったのに」

 梅さんはまた流れた涙を、ハンカチで拭う。

「料理って言えるほどじゃないけど、キッチンにもたったし。洗濯も自分でしたの。梅さんの大変さもよくわかったわ。それとね……恋もしたのよ。一生分のやりたかたことができたと思う」

 勘のするどい梅さんのことだ気が付いているだろう。それにもすかすると兄から話を聞いているかもしれない。
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