スイートな御曹司と愛されルームシェア
 彼が続きを言わないので、咲良は目を開いた。パソコンのモニタの明かりしかない部屋の中で、彼の表情に苦悩の色が見えた気がする。

「どうしたの?」

 驚いて翔太の頬に手で触れると、彼は咲良の手から逃れるように上体を起こした。そうして咲良に背を向ける。

「何でもありません。もう大丈夫です」
「えっ、だって」

 咲良のほてった体と同じくらい、彼の肌も熱かったのに。

「十分勇気をもらいました。ありがとう、おやすみなさい」

 それだけ言うと彼はソファに戻り、毛布にくるまった。咲良は呆気にとられたまま、それでも「おやすみ」とつぶやくように言って、パソコンの電源を切った。咲良の胸はまだドキドキして、体も熱く、疼きを訴えているのに、ソファからは衣擦れの音一つ聞こえてこない。ソファの背もたれのせいで彼がどんな表情なのかどんなふうに横になっているのか見えないが、もう彼は落ち着いてしまったのかもしれない。

(ホントにキスだけで良かったの? でもでも、彼だってその気になっていたはずよ……?)

 いったい翔太は、〝……もし俺が……〟の後、何を言おうとしていたのだろう。


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