スイートな御曹司と愛されルームシェア
(〝もし俺があなたを好きじゃなくても、抱いてもいいですか〟とか?)

 それでもよかったのに、と咲良は思った。職を失い、夢を奪われたこんな私でも、必要としてくれるのなら、その気持ちに応えたかったのに。

 鼻の奥がつんとして涙の予感がする。泣いてしまわないよう、咲良は大きく息を吸い込み、ゆっくり吐きだした。それを何度か繰り返して、気持ちを落ち着かせようとする。

(冷静に考えれば、お互い将来が不安定なんだから、体を重ねたって現実逃避にしかならない。あやうく傷を舐め合うところだったんだから、これでよかったのよ。翔太くんだってそれに気づいたから途中で止めたのよ)

 そう自分に言い聞かせると、咲良は無理矢理目をつぶった。


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