スイートな御曹司と愛されルームシェア

 翌朝、目を覚ましたとき、咲良は漠然とした不安と違和感を覚えた。ソファの背もたれには、いつも通り、きちんと折りたたまれた毛布が掛けられている。

(なんか、いつもより静かかも)

 不安と違和感の原因は静けさだった。ボリュームを絞られたテレビの音も、料理をする音も聞こえてこない。

 あわてて起き上がると、ローテーブルの上に一人分の朝食が用意されているのが見えた。翔太はもう食べ終わって片付けでもしているのだろうか。そう思ってキッチンに入ったが、そこは無人だった。

「翔太くん、シャワー?」

 バスルームに向かって呼びかけてみたが応答はない。耳を澄ませても、水音も何も聞こえてこない。胸がざわめき始めるのを感じながら、バスルームの扉をノックした。

「翔太くん、いないの?」

 磨りガラスの向こうに人の気配がしないので、「開けるよ」と言いながら、そっとドアを押してみた。だが、そこにも翔太の姿はない。胸騒ぎが大きくなり、咲良はローテーブルの前に戻った。トーストの皿の下に、四角い紙が置かれている。鼓動が速まるのを感じながら、その紙を広げた。
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