スイートな御曹司と愛されルームシェア

 翌朝、咲良はとあるマンションのエントランスで待っていた。数分前、果穂に電話をして、「会って直接あなたの口から聞きたいことがある」と彼女を呼び出したのだ。エレベーターの扉が開いて、ベージュ色のゆったりしたワンピース姿の果穂が出てきた。ゆっくりした足取りで、咲良に近づいてくる。

「朝倉さん、朝早くにごめんね」
「いいえ」

 そう言いつつも、やはりどこか身構えているように見えるのは、今が朝の七時半という、夜の遅い咲良たちならまだ寝ている時間だからだろうか。

 創太が来てから三日、夜はほとんど眠れなかった。いつもならまだ寝ている時間だが、まんじりともしない夜を明かした咲良としては、これでも待った方だった。

「恭平くんはまだ寝てるの?」
「はい。昨日も遅かったから……」

 昨日、咲良が帰るとき、塾長の恭平はまだ残っていた。以前は一緒に塾を出ることもあったのだが、そういえばこの半年ほど、そういうことはなかった。今から思えば、恭平が果穂と付き合い始めたのはその頃からなのだろう。

「電話で話したように、二人だけで話したいんだけど、少し歩ける?」

 咲良が促すように手でマンションの出口を示すと、果穂はうなずいて歩き出した。しばらく並んで歩いたが、果穂は無言だった。咲良は軽く咳払いをして、昨晩から考えていたことを言葉にする。
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