スイートな御曹司と愛されルームシェア
「最初は……創智学院の求人に応募したのは、伯父に勧められたからでした。学生時代には伯父の経営する塾――英進会ゼミナール――に就職する予定にしてたんですが、卒業間際になって伯父に、〝よその塾を経験しておくのも、視野が広がっていいだろうから〟って言われて」
「視野が広がっていい……ね」

 どこまで本当かはかりかねて、咲良はつぶやくように言った。

「本当です。そのときは私もそのつもりでした。ところが創智学院で働くことが決まった日に、伯父に創智学院の弱点を探れと言われました」
「弱点?」
「経営状況はきちんとしているかとか、非上場株式の所有者の生活態度とか。それらが悪ければ英進会は創智学院をつぶしにかかるし、良ければ吸収するって」
「それで、あなたは実際に何かスパイをしたの?」

 咲良に言われて、果穂は首を振って続ける。

「いいえ、できませんでした。恭平さんも岡崎先生も、ほかの講師の方々も、要領の悪い私に丁寧に仕事を教えてくれるし、失敗してもフォローしてくれるし……。一緒にいればいるほどみんなのことが好きになっていきました」

 果穂が頬を染めて続ける。

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