スイートな御曹司と愛されルームシェア
 咲良の言葉に、果穂はしっかりとうなずいた。始まりがどんな形であれ、結果的に二人が想い合って結婚するのなら、それでいい。

 そう思って咲良がきびすを返そうとしたとき、マンションの方角から「果穂!」と呼ぶ恭平の声が聞こえてきた。何度も心配そうに呼びながら、恭平が辺りを見回し見回し走ってくる。

「恭平さん!」

 果穂の声に気づいて、恭平が彼女を見つけ、ホッとしたような顔で駆け寄ってきた。

「目が覚めたらいないから、びっくりしたじゃないか。本当に心配したんだよ……」

 咲良が見たことがないほど愛情に満ちた優しい眼差し。恭平が果穂の伯父の企みを知っていたのかどうかは知らないが、果穂のことを心から大切に思っているのは確かだろう。

「いったいどうしたんだ?」

 恭平が咲良を見て言った。

「朝早くに朝倉さんを連れ出してごめんなさい。彼女に渡したいものがあったから」

 紗穂はそう言って、バッグから白い封筒を取り出した。表に〝退職願〟と書かれたその封筒を差し出すと、果穂が戸惑ったように恭平を見上げた。

「恭平くんに渡してもよかったんだけど、この前気まずい別れ方をしちゃったから、果穂さんに渡してもらおうと思ってたの」
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