スイートな御曹司と愛されルームシェア
 咲良は途中のスーパーで買い物をしてから家に帰り、夕食のメニューにと、ぎこちない手つきで肉じゃがを作った。まだ翔太と付き合っていると思っている母に仕込まれたのだが、なかなか母のようにうまくは作れない。

(でも、教えてもらったばかりの頃よりは、ずいぶん上手になった気がする。翔太くんにごちそうする機会があればいいのに……)

 そんなことを思った自分自身に、咲良は苦笑した。

 彼の「また後で」は社交辞令に違いない。本当に会うつもりなら、「どこかで待ち合わせよう」とか言ったはずだ。

 それに気づいたとたん、無性に寂しくなってきた。また慣れかけていたはずの静けさがやるせなくて、テレビをつけた。ちょうどプロ野球の試合が放送されている。

 野球を見ると、実家に来たときの翔太を思い出してしまう。咲良の父と貴裕と盛り上がっていた、楽しそうな翔太。私の実家が彼の居場所になればいいのに……と思って首を振る。

(私ったら懲りないわね)

 この二ヵ月、何度翔太への想いを封印しようとしてきただろう。彼の方は咲良のことなどとっくに吹っ切って、株主企業の社長令嬢と付き合っている……もしかしたら結婚している……かもしれないのに。

(私はまだ彼のことが好きなんだ……)
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