スイートな御曹司と愛されルームシェア
どこからか振動音が聞こえてきて、咲良は深い眠りから浅い眠りへと引き上げられた。目覚める前のふわふわしたまどろみがしつこいバイブ音に遮られ、こめかみが二日酔いを訴えるようにズキズキ痛み始める。
「……っさいなぁ……もう……」
うつぶせのまま右手でこめかみを押さえ、温かいベッドから左手を伸ばして、サイドテーブルの上を探った。指先がしつこく震えるスマートフォンをとらえる。それを取り上げ、右手で目をこすりながら液晶画面を見た。次第に焦点が定まって、日曜日の朝九時半、電話をかけてきた相手の正体がわかる。表示されている〝お母さん〟の文字に、こめかみの痛みがひどくなった気がする。
「……はい」
ため息混じりの声で応じると、母の甲高い声が返ってきた。
『もうっ! いい歳した娘が、いったい何時まで寝ているつもりっ!』
咲良は顔をしかめ、パールホワイトのスマホを耳から離して答える。
「まだ九時半じゃない。それに、今日は仕事が休みだし」
電話の向こうから、わざとらしいくらい深いため息が聞こえてきた。
『咲良は本当にグータラね』
「グータラって。夜の遅い仕事なんだから、九時過ぎくらいまで寝てたっていいじゃない」
『あんたはいったいいつまでそんなにのんびりしているつもりなのかしらね』
嫌味の混じった口調に、咲良はあくびを噛み殺しながら答える。
「んー、十時過ぎくらいかな。真面目に働いてるんだから、そのぐらいゆっくり寝てたってバチは当たらないと思うけど」
『そういうことを言ってるんじゃないの!』
「じゃ、どういう意味?」
『もうっ! あのね、いとこの薫(かおる)ちゃんにね、二人目ができたんだって!』
「……っさいなぁ……もう……」
うつぶせのまま右手でこめかみを押さえ、温かいベッドから左手を伸ばして、サイドテーブルの上を探った。指先がしつこく震えるスマートフォンをとらえる。それを取り上げ、右手で目をこすりながら液晶画面を見た。次第に焦点が定まって、日曜日の朝九時半、電話をかけてきた相手の正体がわかる。表示されている〝お母さん〟の文字に、こめかみの痛みがひどくなった気がする。
「……はい」
ため息混じりの声で応じると、母の甲高い声が返ってきた。
『もうっ! いい歳した娘が、いったい何時まで寝ているつもりっ!』
咲良は顔をしかめ、パールホワイトのスマホを耳から離して答える。
「まだ九時半じゃない。それに、今日は仕事が休みだし」
電話の向こうから、わざとらしいくらい深いため息が聞こえてきた。
『咲良は本当にグータラね』
「グータラって。夜の遅い仕事なんだから、九時過ぎくらいまで寝てたっていいじゃない」
『あんたはいったいいつまでそんなにのんびりしているつもりなのかしらね』
嫌味の混じった口調に、咲良はあくびを噛み殺しながら答える。
「んー、十時過ぎくらいかな。真面目に働いてるんだから、そのぐらいゆっくり寝てたってバチは当たらないと思うけど」
『そういうことを言ってるんじゃないの!』
「じゃ、どういう意味?」
『もうっ! あのね、いとこの薫(かおる)ちゃんにね、二人目ができたんだって!』