スイートな御曹司と愛されルームシェア
「じゃあ、同情を誘うようなことを言って私を騙したのねっ?」
「騙したなんてとんでもない。ただ、今の状態では家族の元には帰れないんです。兄たちにとって俺はただのコマなんです。あの家では、俺は意見も意志も持っちゃいけない。そんな家に……自分を押し殺してまで戻りたくないんです……」
翔太が寂しそうに目線を下げた。その表情が痛々しくて、咲良の胸がギュッと締めつけられる。
(自分を押し殺してまで戻りたくない……)
若いが故のワガママだ、と咲良も何度言われただろうか。大手予備校を退職する前、相談した同僚や家族にも、退職を申し出た上司にも……。〝キミを育てた会社を裏切るということか〟と上司に罵られても、〝何の約束も保証もない相手と資金を出し合って、塾を創立する? 何バカなことを言ってるんだ〟と両親に反対されても、咲良には頭を下げて理解を請うことしかできなかった。それでも、大手予備校特有の受講生との距離感にもどかしさを覚え、恭平の〝大手にはできないきめ細かな指導ができる塾を設立したい〟という熱意に動かされて、自分を押し殺してまで夢を諦めたくないと思ったのだ。
「わかった」
咲良の言葉に翔太が顔を上げた。
「騙したなんてとんでもない。ただ、今の状態では家族の元には帰れないんです。兄たちにとって俺はただのコマなんです。あの家では、俺は意見も意志も持っちゃいけない。そんな家に……自分を押し殺してまで戻りたくないんです……」
翔太が寂しそうに目線を下げた。その表情が痛々しくて、咲良の胸がギュッと締めつけられる。
(自分を押し殺してまで戻りたくない……)
若いが故のワガママだ、と咲良も何度言われただろうか。大手予備校を退職する前、相談した同僚や家族にも、退職を申し出た上司にも……。〝キミを育てた会社を裏切るということか〟と上司に罵られても、〝何の約束も保証もない相手と資金を出し合って、塾を創立する? 何バカなことを言ってるんだ〟と両親に反対されても、咲良には頭を下げて理解を請うことしかできなかった。それでも、大手予備校特有の受講生との距離感にもどかしさを覚え、恭平の〝大手にはできないきめ細かな指導ができる塾を設立したい〟という熱意に動かされて、自分を押し殺してまで夢を諦めたくないと思ったのだ。
「わかった」
咲良の言葉に翔太が顔を上げた。