スイートな御曹司と愛されルームシェア

　咲良が矢継ぎ早に問いかけると、翔太は困ったように顔の前で両手を挙げた。

「それも昨日説明したんですよ」
「覚えてないんだから、もう一度説明して」
「だから……咲良さんの言う通りです」
「え？」
「仕事を辞めて家を追い出されたんです。それで行くところがなくて居酒屋とバーで飲んで、気分が悪くなって外でうずくまっていたところを、咲良さんに拾われたんです」
「居酒屋とバー？」

　まさか私と同じ店にいたんだろうか、と思いながら、咲良は問いを続ける。

「家族は？」
「それも説明しました」
「もう一度説明しなさいってばっ！」

　ついつい咲良の声が大きくなり、翔太が悲しげな口調で答える。

「家族はいないんです」
「え？　まさかあなた、ひとりぼっちなの？」

　咲良がハッとしていたわるように言うと、翔太が気まずそうな表情になった。

「いえ、今の俺の心情を理解してくれる家族が一人もいないってことです」

　とたんに咲良の頭に血が上る。