スイートな御曹司と愛されルームシェア
「はい。そのときTDホールディングスの会長兼社長であった父に、経営企画部長になってほしいと言われました。最初は好きな仕事を辞める気はないと言って断ったんです。でも、今まで何も知らず苦労させてしまった償いとして受け入れてほしい、兄たちも歓迎しているから、と強く言われて、実の父の頼みだから、と受け入れました。でも、そんな選択したことを今では後悔しています」
「どうして?」

 咲良の問いに、翔太が皮肉な笑みを浮かべて答える。

「最初は義理の兄たちも好意的に迎えてくれたんですが、父が経営から退き、長兄が社長に、次兄が副社長に就任したとたん、態度が豹変しました。父に言われて仕方なく部長に就任させたが、無能だとわかればすぐに追い出してやる、と言われました」
「ひどい……」
「それでも、兄たちの気持ちもわかります。実の父に一時的に愛人がいたことは気づいていたそうですが、まさか子どもまでいるとは思ってなかったのでしょう。実の母が死んで間もないのに、元愛人とその子どもをいきなり連れてこられて、今日からおまえたちの家族だと言われたら、やっぱり俺だって怒りや反発を覚えると思いますから」
「そうかもしれないけど……」

 きっと翔太は、会社社長の御曹司として育ってきた二人の兄には想像もつかないような暮らしを送ってきたはずだ。それなのに、二人の兄の気持ちを思いやってあげるなんて……。

 咲良の胸が苦しいくらいに痛くなる。
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