スイートな御曹司と愛されルームシェア
 何かが違っていたかもしれない、という言葉を咲良は飲み込んだ。恭平が複雑そうな表情をしたからだ。

 今さらもしもの話などしても仕方がない。咲良が気持ちを伝えていたとしても、彼と恋人同士になれていたかはわからないのだから。そう思いながらも、職場で気まずくなることを懸念して、今まで気持ちを押し殺してきたことを後悔した。さっさと玉砕して吹っ切っていた方が、今ほど惨めな気持ちにならなかったかもしれない。

 咲良はそっと立ち上がった。

「一つ教えて。あなたは朝倉さんを妊娠させてしまったから、責任を取って結婚したいの? それとも……?」

 咲良が言葉にしなかった問いに恭平がうなずく。

「そう……」
「咲良さん」

 恭平にハンカチを差し出されてはじめて、咲良は自分の頬が涙で濡れているのに気づいた。首を振ってバッグから自分のハンカチを出して涙を拭い、深呼吸をする。

「今月の最後まで、しっかり講義はするから……」
「本当にすまない」
「株式も売却するわ。手続きするよう証券会社に連絡しておく」
「ありがとう」

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