スイートな御曹司と愛されルームシェア
「せっかく翔太くんが作ってくれたんらから、ちゃあんと食べるよ」

 涙があふれてくるのは、塾を辞めさせられることが悔しいからか、それとも翔太の気遣いが嬉しいからなのか。わからないけど、とにかくカレーを口に運ぶ。

「翔太くんも食べなさいよ」

 涙目で睨むと、翔太が肩をすくめて向かい側の席に座った。そうして「いただきます」と言ってカレーを食べ始める。

「チキンカレー大好き」

 咲良の泣き顔を見て、翔太がつらそうに首を振った。

「無理して食べなくていいんですよ」
「人の好意を無にするなんて許せないのよっ」

 そう言うと咲良はアルコールで満たされていた胃にカレーを詰め込み続けた。だが、半分ほど食べたところで、ついにスプーンを運ぶ手が止まる。

「やっぱ……もう無理。ごめん……残りは明日食べるから、冷蔵庫に入れといて」

 それだけ言うと立ち上がって洗面所に向かった。鏡に映る顔は泣いたせいか、しこたま飲んだせいか、自分でも笑えるほどブサイクで腫れぼったい。目も充血していて、翔太が〝カラスの濡れ羽色〟と誉めてくれた黒髪も、後頭部でまとめているクリップからほつれて、すごくやつれて見える。

「ふふ……」

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