エゴイストで、ナルシスト。
頭の中がパニックになり、
息が苦しくて足がもたついてきた。

「桜ちゃん!桜ちゃん!!」

このままでは、薫ちゃんも転んでしまう。

「桜ちゃん!誰か、いるよ!助けてもらおう!?」

薫ちゃんが何か言っているのに、何を言っているのかわからないぐらいに苦しい。
私は泣きそうになりながら、
足を引っ張る私の手をしっかり握ってくれていた親友の手を、振り払った。

「え!!?」

薫ちゃんが、目をまん丸にして振り返る。

「いいから、逃げっーーわっ!!」

どたっ!
っと音を立てて、転んでしまった。

い、いたい。

そう思ったのもつかの間。


「つーかまーえたー」

気持ち悪い声が聞こえる。
同時に両肩に手がぽん、と置かれた。
男が追いついたのだ。

「やだっ!さ、桜ちゃんっ!!」

「へぇ、桜ちゃんっていうんだあ。かーわいい」

両肩に置かれていた手が、両脇に添えられ、ひょいっと持ち上げられた。
男に向き合うように座らされ、男は人気が全くないことをいいことに、ニヤニヤと微笑みながら私の全身をジロジロ見回す。
何歳くらいの人かは知らないが、無精髭が生えていて、臭い。
気持ち悪かった。
しかし、呼吸が、心臓が苦しくて、反応もできない。
冷や汗が止まらない。

「…う」

「あれ、大丈夫?転んだだけなのに、反応なくなっちゃったけど?おーい」

顎をもちあげられた。

やめて、
そう言おうと口を開いた。
ーーー刹那。



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