今宵、桜の木の下で

びしょ濡れのシャツと借りた体操服とジャージを洗濯機に入れ、スタートボタンを押した。

そのまま制服を脱いでシャワーを浴びる。熱いお湯が冷え切った身体に心地いい。

時間を稼ぐようにゆっくりと着替えてからリビングへと戻った。


「はい」


佳奈子さんは温かいココアを用意してくれていた。


「……ありがとう」

「風邪ひかないといいわね。寒かったでしょう」


―――――。


リビングで向き合いながら……会話が続かない。


「……メールしたのに」

「メール?」

「迎えに来てって……」


佳奈子さんは驚いた表情を見せ、携帯を手繰り寄せた。


「うーん。きてないよ?」

「送ったもん、ちゃんと!!」


むきになって訴える私に

「ゲリラ豪雨で、携帯が通じにくいってさっきニュースでやってたわ。
今度はちゃんと迎えにいくからね。何かあったらまたメールして」

何だか嬉しそうな顔をして笑顔を見せる。


その時、―――。


ピピピピピッ。

佳奈子さんの携帯が鳴った。


――――!!


「あ……。美琴ちゃんのメール、今、届いたっ」

「え、―――」


もう、タイミング、悪いな。


居心地の悪さを感じてソファに移動すると

「制服、乾かさなきゃね」

それを察してか、佳奈子さんはリビングから出て行った。
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