今宵、桜の木の下で


「え、連絡、来たの?」


瑛理奈は、明るくて仕切り屋で。兄と弟に囲まれて男らしく育ったせいか、私の一人っ子体質なのんびりした性格をいつも笑うんだ。


「うん。瑛理奈の祈り、すごい威力だった……」

赤くなって俯く私の頭を

「可愛いんだから、もうっ。うまくいくといいね」

よしよしと撫でながら、まるで自分の事のように喜んでいる。


取りあえず、今日は一緒に帰れる。

明日は? 明後日は??

私は毎日、ドキドキしながら過ごすのかな。


「瑛理りん……。心臓が、もたないよ……」

「自信持ちなって。美琴は可愛いんだから。ねっ??」


自信なんてないよ。

私なんて地味だし、目立たないし、何の取り柄もないまま生きてきたんだもん。


「……っ」

「口、尖らせちゃって。私が彼氏なら、チューしちゃうぞ」


唇をきゅっと摘ままれ、私はアヒルみたいな顔になる。


「ううー」

「ほら、元気、出して」


瑛理奈の優しさに嬉しくなって、私は思わず抱きついた。


「瑛理りん、大好き」

「もう、美琴ってば。言う相手、間違ってるんじゃないの」

「もうっ、からかわないでよっ」


ケラケラと瑛理奈の笑い声が教室に響く。


「ね、1時間目、音楽室じゃなかったっけ?」

「わっ急がないとっ」


私たちはきゃあきゃあ言いながら、教室を飛び出した。


チャイコフスキーの音楽に癒されて、気持ちいい睡魔に襲われる。


花のワルツ……この曲、好きだなあ。

そういえば昨日、桜が……。


イクラ、―――。

イクラはどうして私の前だけに、現れるんだろう。

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