姫恋華〜ひめれんげ〜【改稿版】
「ところでだ。風間。貴公、ここでの面接、もう一つ目的があるのを知っているか?」

 そこで急に声を潜めた久賀。

 新之助は怪訝な顔で見返した。

「知らぬ。何だ?」

「そうか。では、あまり周知されてはいないのだな」

「何の話だ」

 新之助が話に食いついたのが嬉しかったのか、久賀は「出所は教える訳には行かぬが……」と言いながらもにんまり笑った。

「勿体付けずともいい」

「まあ、そう急かすなって。ああ、でも、あれだな。貴公が採用されなかった場合は話しても無駄になるな」

「……」

「うん。やっぱり、再び用心棒としてここで会った時に教えて進ぜよう」

 そう言うと、久賀は引き留める間もなく去って行ってしまった。

 新之助は呆気にとられ、浪人たちの中に紛れる久賀の背中を追っていたが、その時再度呼び出しに名を呼ばれ、気持ちを入れ替えるように息をついた。

(採用されても、あの人の話は聞きたくないな……)と思いながら。
< 72 / 132 >

この作品をシェア

pagetop