彼が涙を流した理由
「どうぞ」





そう言って椅子を差し出してくれたので、「ありがとうございます」と呟いて座った。





「なにか、お手伝いできることありますか?」





「図書委員は、あんまり仕事ないからなぁ……暇ですよ」





そう言って苦笑いをする出口君。





「出口君、は……どうして図書委員に入ったんですか?」





「どうしてって……ここが好きだからです。静かな場所で自由に本が読めるなんて……僕にとっては天国みたいなものですから」





本が好きになれるって、いいなぁ……





『あさひ!この本面白いぞ!』





本が、大好きだったお兄ちゃん。





小さい頃は、絵本の読み聞かせもしてくれてたっけ。





ごめんね、お兄ちゃん………





あたし、もっと本読まなきゃ。お兄ちゃんの分も。






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