Kiss of a shock ~涙と~
ぬいぐるみの中の手紙を見つけた、あの雨の夜。


その日のうちに、俺は家を出ることを決意した。


じいちゃんの家には、もう二度と帰ってくるつもりはなかったから、小さな鞄の中に大事なものだけを詰め込んで傘も差さずに家を飛び出した。


最初に、健二が家を出た事に気が付いたのは、直人だった。


数分も経たずに雨の中急ぐ健二の後を追って、直人が走ってきた。


「健二!」


直人の声に、影を踏まれるように足を止めた。


もっとも、雨の中に影なんかありはしなかったけれど。


振り返って、直人を見た。


自分の自慢だった、カッコイイ兄。


大好きだった、兄を。


健二は崩れないように、歯を食いしばり言った。


「何・・・?」
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