Kiss of a shock ~涙と~
何、と言われて直人は少し俯き加減に目を伏せた。


健二の母が、自殺したそうなった経緯をこいつはしっているのかもしれない。


その時、はじめてそう思った。


なぜなら、直人の目から涙が・・・。


泣いたところなど見たこともない、気丈な兄の眼から、涙が零れているように見えたからだ。


そうか―と、思うと、何だか面白くなった。


俺は子供だった。


何も知らない、5歳の子供。


だけれど、ただの5歳の子供じゃなかった。


大企業の社長である父の捨てた女を母に持つ、哀れな5歳の子供・・・だ。


「笑ってたんだ。」


健二はぽつりと呟いて、直人を睨んだ。


「健二・・・。」


「母さんが、ずたぼろになって死んで、嬉しいだろ?」


「そんな・・・!」


そういう奴じゃない、そういう兄じゃない。


分かってる―。


けど、そう思わされてるだけで、本当は―。。。


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